新たにビオトープをつくる人のために

1 ビオトープは生き物を飼う場所ではない

池をつくり、メダカを放し、毎日餌を与えていたら、そこはビオトープではありません。ビオトープとは、もともと野生の生き物のすみかという意味です。人為的なビオトープといっても、そこはあくまで、野生の生き物に場所を提供するだけの場所でなければなりません。

2 (原則的には)ビオトープは生き物を入れる(放す)ための場所ではない

ビオトープは大きな水槽ではありません。何を入れる(放す)かではなく、何がやってきてくれるかを原則的に考えてください。
ただし、メダカやドジョウは空を飛んでやってきてはくれません。そのようなものに限っては、近くの生息場所から移植するしかありません。
 
マニアックになって、珍しい生き物を欲しがらない、これを大原則にしてください

3 その場所にあったビオトープを

の真ん中にタガメビオトープをつくろうとしても無理です。タガメが生きていくには、近くに雑木林があること、逆に町の灯りが近くにないこと、などいくつかの条件があります。自分のつくろうとしている場所の近くには、どんな生き物がすんでいるかをまず考えてください。そして、その生き物がどうすればビオトープへ来てくれるかを考えてください。

4 池をつくらないビオトープもある

ビオトープづくりは必ずしも池づくりではありません。バッタのためのビオトープ、チョウのためのビオトープ、蜂や小鳥のためのビオトープなど、池づくりを伴わないビオトープはいくらでも考えられます。

5 放すときは、地元の生き物を使う(生態系に配慮を)

同じ種類の生き物でも、住んでいる地域が遠く離れていると、遺伝的な違いが大きくなります。たとえば、関東と関西のゲンジボタルは生態が異なり、発光の点滅間隔も違います。ひとつの種が病気などと闘いながら数万年、数十万年を生き抜いていくためには、遺伝子の多様性はとても重要です。
あなたの趣味や不注意で、勝手に遺伝子を混ぜ合わせないでください。
ビオトープに放した生き物は、たとえ植物でも、そこから出ていくことは止められないと考えて、遠く離れた場所で採集された生き物は放さないでください。
 その地域で、既に絶滅してしまった生き物を放すときは、遺伝子が混じる心配はありません。しかし、地元の専門家に相談してからにしましょう。
その場合でも、
業者などから購入した産地のはっきりしない(業者が産地を教えたとしても、本当かどうか不明です)生き物は、絶対ビオトープへは放さないでください。

6 ビオトープはガーデニングではない

浅い池は放っておくと半陸生や陸生の植物が進入し、次第に陸化してきます。浅い池のままで保つのであれば、定期的に草抜きをしなければなりません。トンボ池やアメンボ池も、草が茂りすぎると、トンボやアメンボがやってこなくなります。植物が増えすぎないように注意する必要があるのですが、ビオトープづくりはガーデニングではありません。管理は最低限にして、触りすぎないようにしましょう。

7 実際の池づくり 

田んぼはもともと水をためるための場所ですから、浅い池をつくるのは難しくありません。しかし、稲作を止めて数年以上経っている田では、草抜きをした後念入りにしろかきをしないと水が抜けてしまいます。また、田んぼの耕土層やその下の粘土層はそれほど厚くはありません。棚田では4,50cmも掘ると粘土層を突き抜けて石ころが出てきます。粘土層を破ると水は全く貯まりません。深みをつくる場合は、ゴムシートを土の下に敷きます。しかし、ゴムシートは非常に高価です。安くあげるためには、工事用の青いシートを二重にして、その間に温室用のビニールを挟むなどの工夫をしてみてください。費用は十分の一ぐらいになると思います。